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樹 風佳 / Fuka Itsuki
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 ひとことで言い表すなら、『天使のささやき』。
 忙しく生きる人々がふと我に返ることのできる、清涼感あふれる歌声が魅力だ。
 優しさあふれる歌詞と、聴く者の心の琴線に触れるかの歌声は、日々の暮らしの中でやすらぎを求める老若男女の潜在意識にそこはかとなくアピールするはず。樹風佳本人は、『深い優しさ』を自己作品の永遠のテーマとして捉え、音空間の中でさまざまに表現していく。
 サウンド・クリエイターである増田隆宣が樹の歌声と楽曲に施したのは、空間を色彩のごとく染めていく拡がり。優しさに彩られた空間世界を、樹の声によってかもし出したい、との願いが強く込められている。
 さらに、空間音楽として、リズム楽器の編成は最小限におさえられ、爽快さとしなやかさを活かしている。樹の声は透き通るような繊細さ持っており、ともすれば少女のか弱ささえ感じさせがちだが、その肉声を、発想の転換によってコーラスとハーモニーとして重ねることに成功。結果として、このうえなく現実離れした音空間が作られているだけでなく、聴く人に重厚な感動を与える。
 増田隆宣によれば、樹の声は空間を創造する構成要素である。ヒューマン・ヴォイスによってひとつの非現実な空間を存在させるための手段として音楽が完成していると言えるだろう。


 文/秋和良於
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